雪割草
 煙草の長さも半分を過ぎた頃、チュンサンは余った煙草のソフトケースをシローに手渡し、

「元気でな。シローさん」

 両手で冷たい手を握った。

「ありがとう。チュンサン」

 三人の影は短く繋がり、ふんわりと輪を作った。

「シローさん、無事に福島まで辿り着くんだぞ!

そして、用事が済んだら、また帰って来いよ!

俺達は待ってるからさ」

 ニシヤンは少し照れくさそうに言った。

「ありがとう、ニシヤン。

本当に、二人とも今までありがとう」

 シローは握った掌に、感謝のぬくもりを込めた。

「俺はさあー……。

本当は俺、もう人間が嫌になって、この世界に飛び込んだんだ。

周りの人達もうんざりだったし、ましてや自分の事も嫌いになっていた。

だからホームレスになって、誰とも交わらずに生きていこうって……。

そう思ったんだ。

でも、それは間違いだった。

人間は、誰とも関わらずに生きて行くことは出来ないって……。

みんなと出会って、そして美枝子と一緒に暮らしてみて、ようやく分かったんだ。

これからも多分、ずうっとそうして生きて行くんだろうなって、今はそう思う。

あんな……。

あんな狭い世界でも、いろんな出来事があった。

みんなには、色々と助けて貰ったよ。

本当にありがとう……。」

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