雪割草
第十九章~北上
 もう、どれくらい歩いて来ただろうか……。

歩き疲れたシローはリヤカーのハンドルに腰を下ろし、東京の光化学スモックで霞む空を見上げ、物思いにふけっていた。

゛今ならまだ、引き返すことも出来るけれど……。゛

 ふと、そんなことも脳裏をかすめた。

 沿道の木々達は既に葉を落とし、冬を迎える準備をしていた。

シローは思い立ったように立ち上がり、

゛今夜の食い扶持でも探すか……。゛

 独り言を呟きながら、板橋駅に向かってリヤカーを引き始めた。
< 86 / 208 >

この作品をシェア

pagetop