雪割草
第二十章~缶コーヒーの温もり
 見知らぬ土地の風景は、シローを孤独へと導いていった。

日が暮れた頃の国道四号線を、無機質なヘッドライトが背中を照らして走り過ぎ、遠くの公営団地の灯りは家族団欒を象徴していた。

シローが求めた温もりの光だった。

 喉の渇きをペットボトルの水で潤すと、四号線を逸れて゛幸手゛の街を目指し、リヤカーを引いて行った。

 今夜はここで一夜を過ごそうと考えていた。

それには雨風を防げる場所を探さなければならない。

 幸手の街灯りは遥か向こう側の暗闇に、ポツラポツラと並んでいた。

 知らない街で道に迷うよりは、この近くに野宿した方が賢明だと考え、県道沿いを歩いた。

 すると、二十メートル程先にコンビニエンスストアが見えてきた。

駐車場には七・八名の若者がたむろしながら、みんなで談笑していた。

皆、揃いのジャージを着ていて、中には数名でサッカーボールを蹴りながら、遊んでいるのが見えた。

多分、地元のサッカーチームの若者が、練習帰りに立ち寄っているのだろう……。

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