雪割草
 埼玉あたりに入ってくると、通りの近くには田んぼや畑も見え始めてきた。

道路沿いには水路が走り、流れる水が心地良い音を刻んでいる。

 バス停の近くに、無人の野菜販売所があり、六個入りのジャガイモを百円で買うと、国道から少し外れて調理の準備を始めた。

調理といっても、荷台に積んでいた鍋とペットボトルの水で茹でるだけである。

シローは二個だけ茹でて、腹ごしらえをした。

 午後の日差しに、背中を後押しされている頃、春日部へと辿り着いた。

市街地を突き抜け、見上げた先に陸橋が通っていた。

 緩やかにカーブを描く登り車線の歩道を、片足を引きずりながらリヤカーを引いて行くと、大きな四車線のバイパスに出た。

゛四号線だ!゛

゛これを真っ直ぐ行けば、福島だ!゛

 シローは背筋を伸ばし、額の汗を拭った。

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