君がいれば・・・①
「葉山部長が自ら来るとはね~、瀬奈が心配だったんだよ」



葉山がいなくなると亜佐美がコソッと口にした。



いい男2人から思いを寄せられている瀬奈が羨ましい。




瀬奈は困った顔をして近づいてきた客に「いらっしゃいませ」と言った。



今日はどうしてもお客様が近づいてくると身構えてしまう……。



怖い……。



そう思っている自分が怖くなった。



受付の仕事が楽しかったのに……。



今は怖い……。



瀬奈は恐怖心を心に抱きながらも頑張った。



閉店時間になる頃、デパートの正面玄関のガラスの扉の向こうが騒がしくなった。



人だかりが出来ているのが見える。



「?」



「どうしたんだろうね?」



亜佐美も背伸びをしてガラス扉の方を見ている。



瀬奈はじっと固まったように動かなかった。



動かなかったと言うより動けなかった。



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