裏切りの少年
32. 本能
「世界にとってか………
お前はこの子供を見たのか」

「………見た」


相棒は身体を起こし、窓を開けた。

夜中なので、肌寒い。


「俺は特例任務の記録係をしたんだ。
遠くから、その子供の戦う姿を映像に残す仕事だ」

「その映像は………」


俺は『G』を脅かす程の子供だ。

どれほどの戦闘能力があるのかを確認したかった。


「機密情報だ。外部に流出するわけにはいかない」

「それじゃあ、この資料をどうやって持ってきた」


『G』は情報流出を極端に嫌っている。

そのため、報告書などの資料が『G』本部内から持ち出しを禁止されている。

だが、俺が持つ資料はあきらかに極秘資料だ。


「それは今日使う資料だ。
いくら『G』からの特例でも、言葉で伝えただけで国のトップ達が信じるか。
俺なら信じない。
そのため、持ってきた」


俺は資料を見たと、資料には議長の印鑑が押されている。

確かにこの資料を見れば、『G』に所属している者は信じるだろう。


「………危険か。まだ子供だろ」

「子供だからだ」


相棒は俺を見ながら言った。


「その子供は自分の力を理解していない」

「無能者ってことか」

「いいや。能力のことじゃない。
精神面での話だ。
お前は軍用兵器『B2M2』を知っているか」

「ああ。対戦艦用遠距離型ミサイルだろ」


『B2M2』とは『ノワール』で開発された軍用兵器だ。

破壊力はこの世界ではトップクラスだが、実戦で使われたことはない。


「特例任務でそのミサイルを子供に撃ったんだ」

「ハッ………」


俺は驚いた。


「前回の任務でも、特例があったんだ。
そこで10人の隠密部隊が冗談半分で『B2M2』の許可を議長に要求したんだ。
隊員達もさすがに通らないと思っていたらしいが、議長は『B2M2』の許可を出した。
そして、任務時に使用。俺はその光景を記録した」

「子供は………」

「生きてたさ。遠くから記録したため、はっきりとは確認できないが、無傷だった」

「その子供の持つ能力で防いだってことか。
資料に書かれた『空間系』………
あるいは『肉体強化系』か」
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