裏切りの少年
60. 終焉
―――『選択の石』
世界を眺めていると、遠くの方で大きな岩が見えてきた。
あれは『選択の石』だ。
この仮想世界と現実世界を繋げる唯一の道。
『G』の議長は『超越者』のことも『世界からの出方』のことも知っていただろう。
それでは、なぜ議長は『選択の石』を破壊しなかったのか。
それは(―)粒子が世界から消える恐れがあったためだ。
議長は『選択の石』を破壊したかっただろう。
だが、破壊と同時に『才能』がなくなる恐れがあった。
そのため、破壊を拒んだとされる。


目的地に近づくたびに、人影が見えてきた。
ミコトに山本、ジュリーにアキト、それにアイドの仲間が3人いる。
皆、地面に座り、のんびりしていていた。
争った形跡は見られない。
俺達は地面に足を着いた。皆は立ち上がり、無事に帰ってきたことに安心を感じたようだ。
アイドは仲間から質問を受けているが、答えようとしない。


「遅くなった」


俺は皆に言った。
皆が頷き、右手を差し出した。
俺達は一人一人に握手をした。


「ジュリー、ちょっといいか」


アイドはジュリーに近づいた。


「何………今さら、交渉でも………」


ジュリーが自分で決めたこと。
俺達は何に強制もしていない。


「いいや。ただ一言言いたい」


アイドは髪を掻きながら、やる気なさそうに言った。


「元気でね」


そう言うと、目線を俺の方へ向けた。
アイドにとっては照れくさかったのかもしれない。
そもそも、この男は不器用な男だ。


『『C』のメンバー殺害計画』後、アイドは『G』にとって『C』の障害となった。
議長からの指示で何度も『C』を抹殺するように指示されたと思われる。
それでも、NO.1のアイドは行動しなかった。
きっと、本部に居ることで命令を聞かない多才能力者が暗殺されそうになっても、議長を含めて本部を襲撃するようにしていたのだろう。
そのため、多才能力者は自分達の好き勝手に行動していた。
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