月夜の物語
一方の新は、鬱々とした表情で、勤務にやって来た悠馬と対面した。
あの出来事から、一睡もできずに今を迎えたのだ。
「…新?なんか顔色悪いぞ、」
「………大丈夫だ」
昨晩のあの方は、きっと姫だ。
寂しくて泣いていたのか、悲しくて泣いていたのか、悔しくて泣いていたのか。
新には到底わかりっこない。
知りたい。
そして、救いたいと思った。
姫は、毎晩泣いているのだろうか。
姫は、何を哀しみ苦しんでいるのだろうか。
姫は、姫は、姫は…―――。
頭が、パンクしてしまいそうだった。