月夜の物語
安い言葉を遣えば、一目惚れ、というやつで。
新は一目で姫に心を奪われてしまったのだった。
「なぁ、悠馬」
「ん?」
「今日の夜警、代わってやるよ」
「は?」
普段の新からは絶対に出ることのない言葉に、悠馬は耳を疑った。
「俺別に夜には用事ないし…代わってくれなくても、」
「いや、代わらせてくれ。どうしても、確認したいことがあるんだ」
「………確認したいこと、って?」
「いずれ、わかるよ」
早朝の城門。
まだニワトリが鳴くにも早いくらいの時間だった。
当たりは夜明け寸前の、紫。