月夜の物語
その時、曲がり角の向こう側から人の気配を感じて新は慌てて立ちあがった。
「…おい!誰だ!?」
「警備の者です、」
「なんだ…夜警か。ここはいい。別へ行け」
「はい、申し訳ございません…」
こちらへやって来たのは、新たちよりも位の少し高い、城内に常駐する警護の者だった。
彼は新のものよりも立派で明るい灯りで辺りを照らすと、新にその場から去るように命じる。
新はひとつ会釈をして、そのまま城を出た。
姫の言葉を、何度も頭の中で繰り返す。
きっとこのままでは、姫は有力者に無理やり嫁がせられてしまうのだろうと、新にはすぐにわかった。
そんなの、娘を大切にしているとは言えない。
娘を籠の中で飼っているだけじゃないか。
自分の意志では城から出られない。誰と会うことも許されない。
それが姫の人生なんて。