月夜の物語
「おはよ、新」
早朝、出勤してきた悠馬は門の前に新が普通に立っていたことにホッと胸を撫で下ろした。
何事かをしでかして、捕まえられたりしているのではないかと、親友なりに一晩中心配していたのだ。
「はよ…」
しかし新は昨日の朝よりも思い悩んだ顔をしていて、目の下には真っ黒いくまを作っていた。
「お前…ちゃんと寝たのか?」
「…や、2日間、寝てない」
「なんでだよ、体に障るだろ。もう今日は全部俺がやっとくから、帰って寝ろ。な?」
「…なぁ悠馬」
悠馬は新の肩に手を置いたが、新はそれをそっと払い、微笑んだ。
「俺、お前のこと、大好きだ」
「…はぁ?」
「恥ずかしいから言わなかったけど、お前と俺は死んでも親友だからな」
「お、おぉ…」
「今まで、ありがとう」
昨日と何も変わらない、早朝の城門。
まだニワトリが鳴くにも早いくらいの時間。
夜明け寸前の、紫。
「あらた…っ!!」
新は持っていた荷物を全て悠馬の足元へ捨てると、城内へと走り始めた。