恋愛遍歴-愛を求めた日々-
それは、携帯の着信に気づいたせいだった。
『はぁー、誰、こんな時間に。
電源切るの忘れてた』
とため息をつきながら、バッグの中の携帯に手を伸ばした。
茜は小説を執筆する時は、いつも携帯の電源を切るのだが、
すっかり忘れていた。
携帯に表示されていた名前は、激しいと言うか、
堕落した生活を送っている元彼の新庄洋介、二十八歳だった。
『洋介…、今、何時だと思ってんの。
朝の四時だよ』
と茜はだるそうに言った。
「お前には言われたくねーな。
どうせ起きてたんだろ。男と一緒か」
とわざとらしく聞いて来る洋介。
洋介とは、一年ほど付き合い、別れてもう五年も経つが、
いまだにこうやって連絡をしてくる。
それも、こんな朝方に…。
人の迷惑なんて考えもしない男なのだ。