【短編】狼彼女とチョコレート
照れたように少し先を歩く会長の後ろ姿。
あたしはこっそり、鞄から箱を取り出した。
それをそっと開ける。
あんまり上手く作れなかったけど…
甘いのが嫌いな会長に作った甘さ控えめのクッキー。
……ちょっと意地悪しすぎちゃったかな?
でもチョコレートじゃないし。
ちょっとぐらいいいよね。
……やっぱり、一年に一度の特別な日だから。
好きな人にはあげたいでしょ?
『大好きだよ』
そんな言葉を添えた箱を手にあたしはクスッと微笑む。
「…待ってよ、会長!」
なんだかんだ言って、今日一番甘いのは会長かもしれないな───
そんなことを思ったら、また笑みが零れた。
「何笑ってんだよ。」
「…内緒。」
END