クルイウタ
「名前は?」


先ほどの質問は、大した疑問でもないようだ。
ナンパでもするかのように、軽い口調で質問を変える。


「か…河野美衣です!」


精一杯の答え。
繋いでいた左手を、右手で触れながら美衣は更に顔を赤くした。


「美衣ちゃんか!ありがとね!」


バイバイ、をするように右手を上げて去ってゆく直也。
残された美衣は、鼓動を抑えようとゆっくり深呼吸をした。
そして小さなため息を、ひとつ。


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