クルイウタ

家族

「ただいま」


返事の返ってこない家の中へ向かって言う。

美衣の家族は母だけだ。

母はいつも仕事で帰りが遅く、一人の夕食も、もう慣れてしまっていた。


父は、美衣がまだ幼い頃に家族を捨てて家を出た。
今頃は美衣の知らない女の人と暮らしているのだろう。


台所へ向かうと、テーブルの上にラップをかけたおかずが置いてある。
それを横目でチラリと見ると、美衣は呟いた。


「あたしにも、お姉ちゃんがいればいいのにな…」






『お姉ちゃんったらさ、ヒドイんだよ!昨日も勝手に私の服着てさぁ――』


お弁当を食べながらあやが、言っていた事を思い出す。
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