クルイウタ
恋は何度かしてきたが、勿論想いを伝えた事はない。
見ているだけで満足な訳ではないけれど、少しの勇気を持てずにいたのだ。


誰か、もっと近くで美衣を「好き」でいてくれたら、この先訪れる暗闇を経験せずに済んだのかもしれない。


「帰るぞ!美衣」


軽く美衣の背中をたたき、笑顔に戻ったあやが言った。


「うん。 …また明日ね、直也先輩」


あやの顔を見て返事をした後グラウンドへ少しだけ向き直り、届かない言葉をかけた。
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