恋愛妄想
「は!女の子だね!」
リカは大笑いした。
「ちょっと…あたし一人じゃ無理っぽいから
相談してるんでしょ…」
リカはパソコンのワードをカタカタ打つ。
それをプリントアウトして
あたしに渡した。

「私こう見えてケーキとか得意。よく妹と作ったんだよね」
スポンジ台のレシピだった。
「生クリームはわかるよね?泡立てて、あとはナオのセンスだから」
あたしはレシピを受け取りじっと見た。
「超最悪なケーキ作って」
「ちょ…やめてよ…」


「絶対凄いの作るからね」

東急ハンズでケーキの枠とハンドミキサー、
ケーキ用の箱とラッピングを買った。

スポンジは何度焼いてもうまくいかない。
焦げる か
半生 か
しぼむ。

リカバリ不可能。
残骸が増えるたび あたしの食事は
失敗したスポンジの湮滅になっていく。

「そんなんだったらスポンジだけ買ったらいいじゃない」
「絶対イヤ」
「じゃあ私、その日合コンで多分オールだから
朝 手伝いに行くよ」
偶然高田君の誕生日が土曜で、高田君休日出勤で
なんて運がいいんだろ、と
リカはあたしの肩を叩いた。


当日の朝、合コン帰りのリカを引きずって明治屋でフルーツを買った。
スポンジを焼いている間リカはあたしのベッドで眠って、
あたしはその間に
慣れない手つきでハンドミキサーを操り
キッチンに生クリームをまき散らした。
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