恋愛妄想
「男の人も、同じなんじゃないかな…」

リカはタバコを消して
「言えよ、私は聞くよ?
言いたくなかったら まぁ明日までだな。休んで自己解決して
なんにもなかったように
出勤しなさいよ」


あたしは
事のすべてをリカに話した。

リカはうなずきもせず、タバコに火をつけては
黙ってあたしの話を聞いていた。


暫くの沈黙ののち、
「あんた、どんだけお姫様なんだよ」
と笑った。

「恋愛してれば悪い方にも考える。
でも悪い方に考えても
なんにもならないでしょ。
自分が悪いと思ってるなら話しようよ。
あんたの世界はあんた一人で回してる。
でも他人の世界を逆回転させたり動きを止めさせたり
ましてやたたきつぶす資格はないんだよ?」

あたしはやり直せるだろうか。
この黒い考えが二度と出ない、
二度と出さない自信なんて
あるだろうか。

「とりあえず、ごめんなさい。話はそれからじゃん…でももし違うなら…
これきり職場だけの関係を続けるだけ。」

「あたし…謝る…」
リカは手を叩いて
「大変よくできました」
と言って笑った。



リカが帰った後、あたしの心臓は破裂寸前だった。
携帯を暫く見つめて
ボタンを押した。

出なかったら…
着信拒否されてたら…

「…生田さん?」
スリーコールで出た彼の声は優しかった。
「きの…
昨日は…ごめんなさい…」
「風邪、大丈夫?」
「…うん…」

「俺もなんか誤解されたかな…」
「違うの…悪いのはあたしだよ…あんなひどい事…」
暫く沈黙のあと、彼が切り出した。

「ケーキ、貰って嬉しくて、実家に持って行って食っちゃいました。」
あたしは涙がこぼれた。
「ありがと…今度はも少しいいの作るね」

二人で笑った。
黒い心はなかった。


あたしは彼が好きだった。
好き過ぎてダメになっていく道を辿る予感がした。
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