恋愛妄想
「ねぇ、あの時の清水君って覚えてる?」
直美から着信。

よく覚えてないけど、
ああ
なんとなく…

あたしは生返事を返した。

「清水君がナオとまた会いたいんだって」

ええっ…?
なにそれ。

「あたし嫌だよ、変な英会話教材売り付けられたり
訳わからん会員になるの」

ぜったいそういうのに違いない。


なんだかんだ言って結局、あたしは清水君と会う事になった。
直美と直美の彼氏同伴で、が条件だった。

「それ、好きなの?」
清水君はあたしが飲んでたファジーネーブルを指差して取り上げ、
一口飲んだ。

「あっまー…ジュースじゃん…」
そう言って大笑いした。
「あたし、これしか…」
「なんで赤面してんの?」
「は?」
清水君は屈託のない性格らしい。
よく笑うしよく食べる。
よく食べるのに痩せていて、
背も高かった。

少し期待したけど
この人は誰に対しても気配りが利いていて
場を盛り上げられる人なんだろう。

携帯番号とアドレスを交換して、
それっきりになる予感がしながらも
その後も電話をくれるマメさに
あたしは恋の予感がした。

今度こそ本物かもしれない…!
神様、ありがとう!!


「大学って…普通の大学じゃないの?」
「うん、ウチ、歯医者だから」
「歯医者だから歯医者の大学?」

ぅわ…頭いい人なんだ…
そんな人があたしなんか
なんでなんでなんで?

あたしはすぐ有頂天になった。
世界中に知らしめたい…!
本物に巡り逢えた。
世の中悪くない。

もうずっと清水君の事ばかり
24時間考えていた。
24時間じゃ足りなかった。

あたしはまたバイトを始めた。
デートしたいし
もっと話したいし
おしゃれだってしたい。

あたしのプー生活は終わりを告げ、
規則正しい生活に戻った。

ふと思い出した。
沢内君の失敗。


もしかして、また
盛り上がってるのあたしだけだったら
そうだったらどうしよう…

会ったり、電話で話した後は
あたしは
そんな悪い予感に囚われてしまった。
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