たった一つの流れ星
「どういうことなんだ?今のアナウンスの意味がさっぱり分からない。」
佑二は立ち上がり、他の車両に移ろうとしたところで、不意に向こうからドアが開いた。入ってきたのはやはり駅員の服装をした、白い髭を生やした男だった。
「私はここの車掌です。このたびは誠にお疲れ様でした。」
その男は入ってくるやいなや、佑二に深々と頭を下げた。
「何がですか?どういう意味なんですか?」
佑二は軽く混乱しており、パニックに近い状態だった。
「…おや?」
急に車掌と名乗る男は佑二の顔をマジマジと見つめた。先程の駅員とは違って、生きた目をしている様に感じた。
「…何ですか?」
佑二は露骨に嫌な顔をした。なんだって意味分からないことを言われ、更には人の顔をみつめてくるとは。
「あ、いや失礼」
男は目を慌ててそらした。
「あなたはご自分がどうなったか分からない?」
車掌が確認する様に聞いてくる。
「どうなったって?僕はバイクに乗ってて気が付いたらここにいたんです!」
「なるほど。自分で気付いてないでここに来る人は珍しいな…」
車掌は小声で呟いた。
「あなたは…申し上げにくいですが、亡くなったんです」
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