新撰組の姫君 〜もしもの世界・斎藤一編〜
そして1日は過ぎ去った。
ー奏Sideー

幹部さん達の収集があったのは昨日のことで、

1日経って、傷もだいぶ落ち着いたのか、一人で起き上がれるようになった。

これで移動が楽になる。

「…十六夜。動けるようになったのか。」

「はい。一君のおかげです。」

抱えられての移動は恥ずかしい上に迷惑がかかるから、傷が落ち着いて良かった。

「…そうか。痛みはどうだ?」

「昨日よりは落ち着いてます。多少は痛みますが平気ですよ。」

痛みも軽くなったし、時間とは凄いものだなと感じる。

「奏~、一~。飯だ飯~!」

ものすごい勢いで襖を開け、朝から叫んだのは左之君。

「…煩い。」

「左之君、まだ朝も早いんだし声押さえてね?」

「おぉ、悪ぃ。でも早く行かねぇと平助と新八に飯盗られちまうぜ?」

…多分、取られるのは左之君だけだと思う。

「…仕方ない。行くか。」

一君が促してくる。

「はい。」

返事をして立ち上がる。

…自分の足で立てることって、こんなに嬉しいことだっただろうか?

時には不自由だと感じることも必要なのかもしれない。

うん。歩けるって素晴らしい。
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