15歳のラビリンス
彩乃の駆けて行った方向に、クラスはない。
美術室や家庭科室へと伸びる渡り廊下が続いてるだけだ。
「…?」
不思議そうに首をかしげて、手を拭きながらそっちを見ると、彩乃は一人の男子生徒に駆け寄っていったところだった。
「…貴昭…?」
男子生徒は2年の工藤貴昭だった。
テスト前一週間、図書館で顔を合わせていたせいか、すっかり仲良くなってみんなしてあだ名で呼ぶようになった。
飯島くんの事はこうちゃんだし。
私も二人から美織ちゃんって呼ばれるようになった。
…まあ、彩乃も貴昭もそうだから、別に不思議な光景じゃないか…。