【短編】夕暮れビターチョコレート
「美柚、来てたのか?」
「だって、バレンタインだから驚かそうと思って。」
ふふと上品に笑うその人は、近くで見るともっときれいだった。
「あ、ありがとな。」
恭にいは幸せそうに頬を赤く染める。
……やっぱり…そうなんだね…?
恭にいが幸せそうなのは嬉しいけど、……すごくすごく苦しいよ。
「あぁ、美柚。こいつが前に話した奈津希。妹みたいなやつなんだ。」
やっぱ恭にいは、私のこと妹って思ってるんだ……。
一度にいろんな現実つきつけられちゃった。
「奈津希ちゃんね!私、椎名美柚っていうのよろしくね。」
その人はとても爽やかに私に微笑みかけた。
全く嫌みのないきれいな笑顔を見て、敵わないって思った――。
胸が締め付けられて痛い…。
早く逃げたい…。