永久の贄[BL]
《長!》

「分かっている……村人共が近くにいる事くらい。しかし……」

《雪だって気付いても良いのに、雪気配すら感じていないようですね。あのかすり傷が何か関係でも?》

「二人共、じゃなかった。一人と一羽。何を小声で? そもそも哉は何時から?」


ざわつきを感じたのか前方を歩いていた雪が振り向き、何事かと不満そうに尋ねてくる。

雪はまだ気付いていないようだ。村人連中が近くにいると言う事を。


「何でもないと言う訳でもないが……村人共が近くにいる。もうそろそろ姿を現す頃だろう。気をつけろ」


忠告をしてやれば驚いたような顔。“全く気付きませんでした”と次の瞬間には焦り出す。

恐らくあの弾には感覚を鈍らせる作用がある薬が塗られていたのだろう。

湖へ行って戻る位の時間であれば死ぬような事はないが、長らく放置すれば死ぬ可能性もある。

いや、雪の場合は死ぬ可能性はそれだけではないか。

出来るだけ夜が来るのと同時に水を汲み、すぐに出発できるようにしなければな。
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