hair salon 『K』

私はじりじりと、壁際に追い詰められていった。


「なあ、茜…本当にわからないのか?」


「わ、わかんないよ…」


「本当に?」


涼太はグッと顔を近づける。

《なんでそんなこと言うの…期待しちゃうじゃん‼》


私は目をそらし、するりと涼太と壁の間から抜け出した。


「茜‼」


「なんでそんなこと言うの?期待しちゃうよ?

…期待してもいいの?」


私がそう言うと

「おーい茜、指名だ。」


黒田さんが呼びに来た。


黒田さんは私と涼太を交互に見て

「あれ、これって修羅場?」


「違います。

ごめん、涼太、変なこと言ったね。忘れて。」


私はそう言い残して逃げるように店に戻った。


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