よっしゃ、恋愛小説を書こう
休日、啓介と待ち合わせたあたしは、出会って一番にケータイを見せつけた。

初めての小説を書き上げて、それが好評を得たのだ♪

「へへーんっ、どうよどうよ、あたしにもこうして反応してくれるファンができたわよ!」

「へいへい、すごいですよ。お見それしました」

「ふふん、わかればよろしい!」

啓介に見せつけていたケータイの画面を閉じて、ポケットにしまう。

それから、空いた手を啓介の腕に絡ませた。

「なんだよ。そんな引っ付いてきて」

「んー、いや、今度こそ協力してもらおうかなと思って」

「は?」

「忘れたの? 幼馴染みの男の子が、女の子にいろいろ教えてくれるのがセオリーなの。さっ! 新作を書くためにも、今日はあたしをたくさんドキドキさせてちょーだい!」

「はあ~……お前さ、これから行くとこがバッティングセンターだって、わかってて言ってるよな?」

「もちろん。そこでどうドキドキさせてくれるかは、アンタの腕の見せ所よ」

「どっちの腕を見せりゃあいいんだか」

ぐだぐだ言っている啓介は、もう、あの文庫を持ち歩いていない。

だってそうでしょ。

あの相合傘は、現実に叶ったんだから。





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