五里霧中
「帰ろう」
しばらく放心していたボクに、白い手が差し伸べられる。
驚きを隠さず、数歩後ずさる。
そのままゆっくりと視線を上げると、その人は見たこともないくらい綺麗な少年だった。
「だ、誰……?」
「キミの神様」
その人はおどけるようにそう言って、優しくボクの頭を撫でた。
「もうこの世界にキミを傷付ける人はいないよ。僕と一緒に帰ろう」
もうこの世界に、ボクを傷付ける人はいない……
その一節の単語の羅列を何度も反芻する。