五里霧中
「……オレはあいつらみたいに殴ったりしないよ。だからもう警戒しないで」
「……嘘つき。だったらなんで私を置いていったの?」
責めるような視線に耐えかね、オレは目をそらす。
呆れたような溜息が辛かった。
「……もう関わらないで。あんたまで巻き込まれたら、私たちが別れた意味がない」
「……そういうわけにもいかないよ。オレは君の兄なんだから」
「……だから鬱陶しいって言ってるでしょ。兄も妹も関係ない……だってそうでしょ?」
親の仇でも見るような目でオレを睨みつける彼女。
オレはどうすることもできず、その先に吐き出される言葉を待った。
「……あんたは私を捨てたんだから」
やっぱり。
オレは心中で舌打ちし、彼女を強引に抱きしめた。