五里霧中



あの男は私が逃げ出すたびにそこにいた。


私を見つけると笑って、傷が増えるたびに心配してくれた。


でも私はその人がキライだ。


だって嘘つきだから。


怒ったり悲しんだり笑ったりする『フリ』をするから。


本当は何にも感じてないくせに。


本当は私のことなんかどうでもいいくせに。



どうせ私はまた捨てられるんだ。


だから期待はしないことにする。


それにしてもお腹が空いた。



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