五里霧中



「……そんなの嘘。私は絶対に殺人者にはならない」


「そうは言っても、状況に応じて対応しなきゃ生きていけないだろう?」


「……そうやって誤魔化して、あんた詐欺師みたい」


「いえいえ、売女には負けますよ」


その言葉にピクッと肩が跳ねる。


どうしてそのことを知ってるんだろう。


というか、この男はどこまで私たちのことを知ってるんだろう……


「全部」


「……は?」


「今思ったでしょ?コイツはどこまで私たちのことを知ってるんだろーって」


「……別「ぜーんぶ知ってるよ。君たちが虐待されていたことも、君が性的暴行を受けていたことも、お兄さんが毒を食らわされていたことも」


舌先で饒舌に言葉を転がす男。



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