五里霧中



「だから、助けに来た」


私は何も言えなかった。


「君はお兄さんと一緒に暮らしたいんでしょ?だから三人で帰ろう」


「……か、帰るって……私には帰るところなんか……」


言いかけた時。



シュッ


顔の横を何かが高速で飛んでいった。


ゆっくりと振り向くと、背後の壁には深く突き刺さったナイフ……



「……何言ってんだよ、あんた」


兄が目を覚ましたらしい。


どうやら男を狙ったナイフが私の方に飛んできたみたいだ。



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