五里霧中
「あはははっ、そんな棒きれじゃ倒せないよぉ」
悲鳴に近い奇声を発しながら、何度も包丁が振り下ろされる。
思った以上に力が強い。
気を抜いたらすぐにでも弾き飛ばされてしまう。
「カイル!あいつのところに行け!」
いつもよりも大きめな声で叫ぶと、カインは視界の端で小さく頷いた。
カインの足音が消えていく。
「あーあ。なんでそういうことするかなぁ。
誰かが来たらあなたたちを殺せないでしょぉ?」
バキッ
盾の代わりになっていた棒が折れ、包丁が俺目がけて落ちてくる。