月夜に舞う桜華



朔夜が見つめるなか、あたしは、上着を捲った。


自分のではない息を飲むのが伝わってくる。


「――――これは、和に刺されたの」

「!」


もう痛みのないそれにそっと触れる。
右腹部斜め下。
そこには普通ならば受けることはない痛々しいナイフの刺し傷が残っている。
一生消えることのない、傷。
痛みはないのに、時々疼く傷を忌々しく思う。



何故あんなことになったのか。
和が、一番信頼していた仲間が、裏切り、憎まれていたから。


本当に突然だった。
二人っきりになりたいって皇蘭からかなり離れた場所に和と二人やってきた。
海が見える丘の綺麗な場所だった。
生憎、天気はよくなくて、今にも空が泣きそうな位にどんよりとしていた。



いつも明るくて、べったり引っ付いてきていた和が真面目な表情であたしを見つめる。



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