月夜に舞う桜華



違う、あたしのせいじゃない。
勝手に狂ったのは和だ。


あたしのせいじゃない。


「せっかく俺のものになったのに、生きてたなんて………困った奴だな」


あぁ、もう違うとあたしは思った。
一番初めの皇蘭を創った頃までの和はもう何処にもいない。
ここにいるのは、イカれた殺人未遂犯。
和は、きっと桜姫より前に死んでしまったのだ。


「桜姫、もう一度、死んでくれ」


スッとナイフが横を滑る。
チクリとした痛みと共に何かが頬を伝う。確認しなくてもそれは血だ。


「…………大人しく、あたしが死ぬと?」

「そうしてくれると有り難いな」


少し前だったら、はい喜んで死んでやろうとか思ったかもしれない。


でも、今は違う。


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