月夜に舞う桜華
「………残念だけど」
ナイフにこれ以上触れないように距離をとる。
「朔夜に怒られるから」
「………朔夜?」
和の眉間に皺が寄る。
「雅龍の総長」
「だから?」
「勝手なことすると怒られるから」
フッと小さく笑う。
こんなときまで朔夜の事が気になってしまうのだから重症だ。
「桜姫………そいつが、好き?」
くしゃくしゃに和が顔を歪める。
好き……か。
「朔夜はね、ずっと一緒にいてくれてるの」
あたしが、もういいよって言ってもね。
それが当たり前になりつつあるから、慣れって怖いと思う。
「あたしは、………朔夜なら、信じれる。」
裏切りから始まった疑心暗鬼。でもあたしは、もしかしたら最初から誰一人信じていなかったのかもしれない。
都合のいいことばかりに置き換えていただけ。