月夜に舞う桜華



「なに」

「一人でどこ行くの―?」

「関係ない」


男達には一切目を向けない、足も止めない。


「可愛い子が一人で歩いたら危ないよ?」


優しい声で言っているけど、その裏に潜む魂胆にあたしが気づかないとでも思ってるのか。


残念ながら、その手には乗らない。


「ほっといて」


大概の連中はこう言えば諦める。


「チッ」


ほぉらね。


(ハッ、つまんない)


心の中で嘲笑ってあたしは屋上へ足を進めた。








屋上は、晴れにも関わらず誰一人いなかった。


(ラッキー)


誰もいないなんて素晴らしい。


鼻歌を奏でながら、あたしは、屋上のドアの屋根を登った。


ここなら、見つかることもあんまりない。

< 4 / 310 >

この作品をシェア

pagetop