王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
「アハハ。……久我隼人って書いてある」
「書いてあるって……。一年の部屋を決めたのはお前だろうが」
「僕、やらかしちゃったみたいだね」
「くがはやと……さん? 女のひとには珍しい名前ですね」
くーちゃんとか、はーちゃんとか可愛い呼び方を許してもらおう。
時々は同じベッドで眠って、朝までおしゃべりしよう。
綾菜は早くも女の子同士の楽しいライフにこころを馳せた。
「半崎……」
「なんですか?」
楽しい空想のなかに、半分身を沈めたまま綾菜は答えた。
御影がやけに厳しい表情をしているが、同室者に会うのが楽しみすぎて、あまり気にならない。
「悪い。久我隼人は、男だ」
「……おとこ? ……お、男ぉ?」
ありえない。
「ゴメンね。綾菜ちゃん」
無理。
「……ひぃ」
キャパシティーオーバー。さようなら。
「あっ、気絶しちゃった」
「お前のせいだろうが」
「僕、責任とろうかな。それとも、琥珀がとりたい?」
「お前は冗談しか言えないのか」
暗くなる意識の中、漫才のような二人のやりとりが、遠くから聞こえたような気がした。