王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

三話


 綾菜は心地よいまどろみの中にいた。

 ごつごつした手が髪を梳いている。

 すごく、気持ちがいい。このままずっと撫でていてもらいたい。

 でも、目が覚めてしまいそう。

「んっ……、まだ起きたくないよ」

 覚醒しようとする身体に、こころは抵抗する。だが、無駄のようだ。

 意識が徐々にはっきりしてきた。

「無理するな。まだ、休んでいろ」

 低くて柔らかな声が耳元で響く。とても甘くて、くすぐったくなるような声。

 つい最近、どこかで聞いたことがあるような気がする。

 こんな声、女の子では無理だろうな。

 ――んっ? 女の子では無理?

 なら、この声は……。

「誰っ?」

 綾菜はむっくり起きあがった。

 右側に、なにかいる。

 見るな、見ちゃいけない。

 恐怖が待っているとわかっているのに、確認への欲求が抑えられない。

 ――見ちゃえ。

「……ひぃっ」

 顔色をチンゲン菜に変えて、綾菜は一気に固まった。
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