王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

「だ、誰が来るんですか? まさか、お化け?」

 イギリスの寮でも、ある場所で両足を揃えると現れるとか、窓に吐いた息がスペードの形をとると出てくるとかいろいろ噂があった。

 首を傾げると幽霊を呼びよせる伝説が、この寮にあったとしても不思議ではない。

 自慢ではないが、怖いのは大嫌い。

 想像して、顔が白くなる。

「ったく、オマエは……」

 久我は肩を竦めている。

 からかわれたんだ。

「久我さん、私、ホントに怖かったんですけど」

 じと目でにらむと、髪をくしゃりと撫でられた。

 なだめようとしても無駄。

 これでも、少し怒っている。

「別に嘘をついたわけじゃない。野郎の前では、あまりするなってこと」

「ますます、わかりません」

「また、実地で学びたい?」

 久我の笑みが艶っぽくなった。

「け、結構です」

 綾菜は即座にぶんぶん首を振った。また泣く羽目になるのは勘弁してほしい。
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