言い訳
「げ……5時半。打ち上げもう始まんじゃん」
 あたしだって打ち上げ行きたいのになんでこんなことになってんだ!と文句を言いたい。けれど、なんのことはない。あたしが体育委員だからだ。
体育委員は全員体育祭の片付けに駆り出され、その重く疲れた体を引きずりながら、障害物競走の小物やら得点ボードやらを体育倉庫に片っ端から突っ込んでいく作業を放課後に延々と繰り返していた。
 中にはこっそり帰った奴も何人かいて、その分あたしたちの仕事量が格段に増えてしまったのは言うまでもない。
まぁそのおかげで気になる人とふたりきりで会場に行けることになったんだけど。しかし……、
 それを差し引いてもこれはちょっとキツい。体力だけは無駄にあるはずなんだけど。
 なかなか終わらない作業を見ると思わずため息をついてしまう。
 ――と、ふいに肩を軽く叩かれた。
 振り返ると同じクラスで同じ体育委員、しかも体育委員長でもある中村が立っていて、その人物にあたしの心臓が小さく跳ねる。
「えーと……何か用?」
 その中村はどこか気まずそうな顔をしていた。
「あー、あのな石原。非常にお疲れのところとどめさすようで悪いんだが……その。実はさっき委員長から連絡があってさ。時間がないからみんなで先に打ち上げ始めるって」
 あたしは思わず条件反射で「え―――っ!?」と叫んでいた。
 


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