【短編】貴方の背中
それでも、一人で過ごす夜は携帯を握りしめ、日向のことを思い出す。


完璧に忘れられないのは、完璧な恋をしていないからだろうか。
恋の傷を治すには、新たな恋とよく聞いたことがある。


朝日奈部長に合鍵を渡したあの夜。
左手の薬指にあるリングを見て、割り切ったはずなのに……。


必ず、日付が変わる前に帰る背中。


未来を思い描けないこの気持ちが、言いようもないくらい寂しい。


その寂しさを紛らわすために、今日も温もりを抱きしめる。
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