幕末怪異聞録
翌日―――……
「――今日も寒いな…。」
(何だか雪が降りそうだな。)
時雨はお盆に湯のみを2つと沖田が好きそうな甘味乗せて廊下を歩いていた。
沖田の部屋の前に着き、お盆を床に置き襖を開けようとしたその時だった。
「――誰かおらんか!!局長が…!!」
緊迫したその声は何かあったことが明白だった。
その声を聞いた瞬間時雨が開けようとした襖が勢い良く開いた。
そして沖田が時雨の横をすり抜けようとした。時雨は反射的に沖田の手を掴んだ。
「――って、何処に行く気だ!」
「放せ。」
ジロリと見たその目に時雨は一瞬たじろいだ。
「放さないよ。」
沖田がどうしようかなんて一目瞭然だった。
「そんなに行きたいのなら私の手を振り払うか斬るかして行きな。」
その言葉に沖田は目を逸らし、片方の手で頭をかいた。そしてまた時雨に目を向けた。その目にはもう殺気はこもっていなかった。
「――時雨、立ちなよ。いずれにせよ何があったのか僕も知りたいからさ。」
「そうだな。私も知りたいからな。行くか。」
時雨は立ち上がり沖田の手を引っ張った。
「いや、手を放してよ。」
「また暴走したらいけないから繋いだまま。」
「……。」
沖田は観念したのか時雨の為すがままに歩き出した。