幕末怪異聞録
山崎は寒空の下を少し歩き軒下から少し離れたところで足を止めた。
「ーーーーおい、そこで何してんねん。」
めんどくさそうな顔をして見上げたその先には屋根に座り込んでいる時雨がいた。
(こないに寒いのにあの嬢ちゃんは何してんのや!探す身にもなれっちゅーねん!)
「あ、今悪態ついただろうお前。」
そう言ってケラケラ笑う時雨に山崎は眉をひそめた。
そんな山崎を見た時雨は屋根から飛び降りた。
「すまない、冗談だ。冗談。
総司が探してるんだろう?寒いし中に入るよ。」
山崎は飄々とした態度で特に何も言わない時雨にイラついた。
「ちょっと待ちや。そこで何しとった。」
「何って、少し物思いに耽ってただけさ。別に悪さしてた訳でもないんだから、そんなに殺気立つなよな。」
「物思い……?」
笑っていた時雨は山崎の方に目を向けると顔を引き締めた。
「ーー戦が始まればたくさん人が死ぬ。新選組も今以上に変わっていく。」
「……。」
「何で……何で、同じ人間なのに争うんだろうな?私には毛頭理解できんよ。」
そこまで言うと時雨は少し笑みを浮かべ、「おやすみ。」と言うと山崎の横をすり抜けて部屋に戻った。
(そんなん俺にかて分からん。ただ、土方副長の向いてる方が俺の進む道や。)
山崎は暗い空を眺めていた。