青騒-I SAY LOVE-

  

「なんか、こうして手を繋ぐのってあの日以来ですね。ケイさん」

 

ようやく出てきた話題に、ケイさんは視線を投げてくる。


「あの日?」首を傾げるケイさんだけど、ちょっと思案した後、ああっと納得。


あの日が告白した日って分かってくれたみたい。


照れくさそうに空いてる手で頬を掻いて、「そうだなぁ」ぼやきを口にした。記憶のページを捲っているみたい。

頬を掻いたまま思い出す素振り。

で、何かを思い出したのか盛大に溜息をついた。 


「あの日は色んな意味で大変だったぁ。告白よりも、その後が…なあ?」


同意を求めてくるケイさんに、私も思い出のページを捲って失笑。
 

「そうですね。まさかあんなに大きな騒ぎになってるなんて…、なんで私達が誤解し合ってるって皆さん知っていたんでしょうか?」

「謎いよな! 俺とココロだけの秘密だったのにッ…、今だってこのネタでヨウに散々からかわれるし」

 
ぶつくさ文句垂れるケイさんだけど、実は私としては、とっても良い思い出に位置付けられている。


だってあの日は私にとって人生最高の日、誰かを好きになれて本当に良かったと思い知った日なんだから。

 
目的地の和菓子屋さんに到着した私は、ケイさんとお土産を選びながらあの日を、ううん、あの日に至るまでの日々を思い出す。


気持ちを伝え合う、そのきっかけはなんだったっけ―――…。


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