クロトラ!-妖刀奇譚-

男が食客として寝起きしていた道場は、現政権である将軍家に味方していた。



――味方すると言っても片田舎の貧乏道場だ。彼ら浪人を束ねる師範代が将軍家びいきだというだけである。味方も何も、はなから戦力に数えられてもいない


門下生一同は、その頃の流行にのっとって、近隣の他流派と討論を吹っ掛け合っては果ては腕にものを言わせていた。







ただただ、熱かった。

煎じ詰めれば、彼らにとって革命がどうなろうと本当はどうだってよかったのだ。





仕官の口を得られない自分の運命だとか、使い道の無い剣の腕だとか、ままならない生活だとか、ともかくそんな色々なうっぷんを何かにぶつけたかったのだ。



本人たちはただ国のため・義のためと信じきっていたが。















――後から考えれば、そんなものだったと男は思っている。

少なくとも、自分はそうだった。同じ食客の連中も似たようなものだろう。





時代は変わった。
革命はすでに成し遂げられた。







男は、左眼と共にありとあらゆるものを失くした。





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