クロトラ!-妖刀奇譚-
隻眼の男
× × ×
あるところに、隻眼の男がいた。
少し昔、男の眼が両方そろっていた頃、その男の取り柄といったら剣(やっとう)だけで、飯の炊き方も身繕いの仕方もまともに知らないようなそこつ者だった。
まあ男が暮らしていた剣道場には似たような浪人が集まっていたし、その時分世の中にも行き場の無い剣の使い手はいくらでもいた。
――時代に革命の嵐が吹き荒れていた。
長くこの国を支配してきた将軍家と、その腐ったまつりごとを倒さんとする新興勢力が火花を散らし合っていた。
真っ向からぶつかり合うのは時間の問題だった。
まさに、剣の時代。
世が安らかならば単なる侠客か無職者として生を終えるはずだった剣士たちは、今を時ぞとその腕をうならせた。
そんな国中に溢れたゴロツキたちの中で、男は最強に近い者に数えられる一人だった。
あるところに、隻眼の男がいた。
少し昔、男の眼が両方そろっていた頃、その男の取り柄といったら剣(やっとう)だけで、飯の炊き方も身繕いの仕方もまともに知らないようなそこつ者だった。
まあ男が暮らしていた剣道場には似たような浪人が集まっていたし、その時分世の中にも行き場の無い剣の使い手はいくらでもいた。
――時代に革命の嵐が吹き荒れていた。
長くこの国を支配してきた将軍家と、その腐ったまつりごとを倒さんとする新興勢力が火花を散らし合っていた。
真っ向からぶつかり合うのは時間の問題だった。
まさに、剣の時代。
世が安らかならば単なる侠客か無職者として生を終えるはずだった剣士たちは、今を時ぞとその腕をうならせた。
そんな国中に溢れたゴロツキたちの中で、男は最強に近い者に数えられる一人だった。