お妃様も官吏なり!
 
――――……その少女は木簡に目を通し、物憂げにため息を一つついた。

彼女の名前は柳 推琳(リュウ スイリン)。十五歳。

泰安国の超名門柳家当主の娘にあたり、実兄を抜けば柳家唯一の嫡子であり、直系の姫であった。

厳格だが妻子を驚くほど溺愛している柳家当主、尚桔(ショウキツ)には妻が一人しかおらず、子供は推琳とその兄の深宵(ミヨイ)だけ。

そのため推琳は一国の公主並の…あるいはそれ以上の価値があり、周りからは花よ蝶よと育てられるはずであった。

なにより、母親が先王の妹にあたり(つまり現王の叔母)推琳自身は国王の従妹で、皇后にだって余裕でなれてしまう身の上である。

なのにだ。
その母親の方針により、五歳から街の子と遊ばされ、そこらへんの店の手伝いまでさせられ、おまけに十歳で家臣である灰澤(カイタク)と共に別邸に住まわされ、生活費は自分で稼げとまで言われた。

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