【完】天体観測 ~キミと見た星~
俺は病室を出て、椎名翔太が来るだろうと思って、前で待っていた。
するとビンゴ。
椎名翔太は女をつれて病室の前に現れた。
椎名はドアを叩こうとし、俺はすかさず、椎名翔太を呼びとめる。
「おい」
椎名翔太と女は俺に気付き、動きを止めた。
「お前…」
「何しに来たわけ?」
俺の冷たい質問に、椎名は目を光らせながら答えた。
「お前には関係ないだろ」
「まさか、星夏ちゃんに会いに来たとか言わないよね?」
「……」
「あれー?図星?ふっ、キミもしつこいねぇ。星夏ちゃんに迷惑がられてる事くらい気付けよ」
「そんなの、お前に言われる筋合いないね」
俺と椎名の言い合いに、女はただ呆然と見てるだけ。
つか、その女誰だよ。
まぁ俺には関係ないけどね。
「とにかく、もう帰りなよ。星夏ちゃんは俺に任せて、大丈夫だから。」
「はぁ?お前みたいなどこの馬の骨かもわからねぇ奴に任せられるかよ」
ふーん。
椎名、結構怒っちゃってるね。
そんなに必死なのか?
笑えるね。
俺の方が何倍も余裕だ。
「俺は星夏ちゃんに言われたんだ。必要なのは木下くんだけだって」
「…は…?」
目を見開いて驚く椎名。
まぁ、嘘だよ。
そんなの、言われたいけど、言ってくれるわけないじゃん。
「……優木、帰ろう」
「えっ、でも…っ」
「今度、また改めて来よう」
「…………」
俺の言葉攻め効果は抜群だったのか、椎名と女は病室からゆっくりと離れて、反対方向に足を進めて行った。
所詮そんなものか。
君が星夏ちゃんに対する想いは、あんな言葉だけで崩れ落ちてしまうのか。
ガッカリだね。
星夏ちゃんが好きになった男だから、もっと他の奴とは違うと思ってたよ。
星夏ちゃん、あんな奴より、絶対俺の方が君を幸せに……
まぁ、俺も“貧弱な男”だけどね。
だって、君より先に死ぬかも知れないから――…