leicht bitter~bitter sweet続編 side 健一~


 ――――……







「……ぅ……げほっ! げっ……っぐ……!」

 アーケードを走り抜け、大通りに面した街路樹の根元に堪らず嘔吐した。

「……はっ、はあ……っ…………」

 キモチワルイ……。

 朝からロクなモン食ってへんから、胃液しか出てこーへん。
 やのに、未だに口の中に残る酸いい感覚よりも、先程のシーンが鮮やかに甦る度吐き気を覚えた。

「……全然アカンやん、オレ……情けなッ……」

 諦める為――自分で決めた事やないか。恋人同士なんやからキスくらい……当たり前にするやろう。

 それでも、頭を過(よ)ぎるのは“ゆきなちゃんが汚(けが)された”という思い。

 オレにとっては、声を掛ける事すら許されへん、天上人の様な存在やのに――……。

「アイツ……ッ、あんなあっさりと……ッ!!」

 なんで和紗やねん?和紗が相手やなかったら――!!

 なんぼでも邪魔して2人を引き裂く事も出来るのに――……。

 なんで……よりによって和紗やねんな………………。




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