leicht bitter~bitter sweet続編 side 健一~
 そうや……仕事してる間だけは少なくとも忘れてられる。

 しばらくして出勤してきた店長が、来るなり昨晩の家族団欒の様子を嬉しそうに報告してきた。

 昨日の話を、イヴの事を唯はなんも聞いて来ーへん。こういう時、大抵の女なら気になって真っ先に聞いて来るやろうに、唯は全く忘れてるかの様に昨日の話を切り出したりはせんかった。

 ホンマに忘れてるんかもしれんが、多分唯なりの気遣いなんやろう。事実、今のオレにはそれがありがたかった。







 時計の針は11時を過ぎた。そろそろ遅番の奴らが来る時間やな。

 完全に仕事モードに切り替わったオレの心を再び掻き乱すように、それは突然現れた――……。




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